有限会社大地 宮澤社長
雪が遅かった今年、1月末になってようやく本格的な雪がきた。こうなると、長野県境にある津南町は、あっと言う間に雪に埋まる。
「子供の頃、紙芝居で雪を降らせる神様、という話を見たんです。じつは、その話を思い出して、神様がすることなのだから人のためにならないことをするわけない。だったら、どうかして、この雪を役に立てたい。そう思い続けたのが、この事業の始まりなんです」
そう語るのは、今年から雪エネ熟成野菜の製造と販売を始めた、有限会社大地の宮澤社長だ。
もともと、津南には‘雪下(ゆきした)’とよばれる人参が有る。7月下旬に種を播き、秋収穫せずに、そのまま土の中に置いておく。その上に雪がかぶり、ひと冬を過ごさせると、人参は駄目になるどころか、熟成し甘さやうま味が増すのだ。
このことは、単に味覚だけではない。科学的な調査を行なったところ、糖度そのものはそれほど増えないが、うま味や甘味を感じる成分とされる遊離アミノ酸などが3〜6倍に増える。良い香りを出すカリオフィレンは、なんと12倍に増える。雪国ならではの知恵である。近ごろは、それを商品化し、‘雪下人参’という商品名で、結構売れている。



‘大地’の雪エネ熟成野菜は、これを応用した。大きな倉庫を造りその中に大量の雪を入れる。その雪で冷やされた空気が自由に行き交う隣の部屋に、秋に収穫した野菜を貯蔵するのだ。貯蔵庫の中の温度は、冬場で1.5度。夏場でも5度以下になる。
野菜を新鮮なまま、しかも美味しく熟成させる秘訣は、もうひとつその湿度にある。部屋の中の湿度は、ほとんど100%。この湿度が大事だ、と宮澤さんは言う。
現在、雪エネ熟成野菜として商品化が進んでいるのは、人参とじゃがいもだが、大根、キャベツ、白菜、タマネギも雪ムロに貯蔵し、データをとっている最中だ。
消費者の評判も上々。
「食べやすい。子供が生でかじっている」
「香りが良い。生臭さがない」
「一年中、こう言う野菜が食べたいわ」
と、いう声が届いている。
「畑にそのまま置かれている雪下人参は、収穫のしやすい、幹線農道のすぐ近くの畑でしか栽培できないんです。少し奥に作ると、そこまで除雪しなければいけませんから。そのため、収穫される量というのが限られてくるんです。しかし、この方法だと何処でも自由に作れます」
津南の大地にたっぷりと雪を降らせる神様は、きっと目を細めて見ているに違いない。
写真・文 中島太一

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有限会社 大地
新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡乙1401番地
http://www.kuranokura.com/ ←雪下にんじんを使ったジュースも販売中。
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